体温と健康


健常な体温

●人間は環境に関係なく、ほぼ36〜37℃に保たれる

●個人差が大きく、一概に『正常値』は決められない

●一般的に、乳幼児は高く、高齢者は低い傾向がある

 (16歳前後で大人型に変わる⇒年齢差)

●同一人でも午前6〜7時頃が最も低く、午後3〜4時頃が最も高くなるという、

 『日内変動』がある

●女性の性周期により、生理中は低くなる

 (もともと男性より少し高めの人が多い⇒男女差)


体温調節中枢

体温調節中枢は視床下部の後領域にある。

この中枢自体は温寒を感じないが、体温を感じる皮膚などの受容器からの情報を集め、

適切な命令を効果器に送って調節する。

  • 中枢(脳幹)・・・体温産出調節
  • 末梢(皮膚)・・・体温発散調節

自律神経を介しての調節

自分では何とも制御できない神経⇒自律神経

①全身の皮膚の血管収縮

②立毛(トリ肌)

③熱生産の増加

  1. ふるえ⇒最大で正常の4〜5倍の熱生産
  2. 交感神経の昴奮⇒アドレナリン&ノルアドレナリン 成人で最大10〜15%の熱生産
  3. サイロキシン(甲状腺刺激ホルモン)分泌 即効性はなく、数週間かかる

低体温

口腔内体温が35℃未満(腋窩だと34.8℃未満)

甲状腺機能低下症・下垂体機能不全症・アジソン氏病

慢性消耗性疾患・etc. ⇒持続的な低体温症


体温と免疫

平均体温が1℃下がる⇒免疫力は約37%下がる

平均体温が1℃上がる⇒免疫力は約60%活性化

風邪をひいた時、熱がでるのは、体温を上げて免疫力を上げようとする防衛反応


免疫力とは?

人体は、組織や臓器に害を及ぼす、ほとんど全ての微生物や毒物に対しての、

抵抗力を持っている。この『能力』を『免疫』という。

①先天免疫(自然治癒力)

  1. 白血球(顆粒球・リンパ球・マクロファージ)の細胞による侵入物の貪食
  2. 胃酸や消化酵素による侵入物の破壊
  3. 皮膚の侵入物防御機構
  4. 血液中に出現する特定の化学物質による溶解

②獲得免疫

  • 個々人が環境によって獲得した、特異的な免疫⇒ワクチン

生命徴候(Vital signs)

血圧、脈拍、呼吸、体温⇒意識


体温の重要性

低体温だと・・・

  1. 代謝活動が落ちる
  2. 血行が悪くなる
  3. 体内の細菌に対する抵抗力が低下する(免疫力が落ちる)
  4. 心筋梗塞や脳卒中の危険が高まる
  5. ガン、アレルギー疾患、精神病などの疾患にかかりやすくなる

体温はどこで造られる?

骨格筋 59%
呼吸筋 9%
肝臓 22%
心臓 4%

腎臓

4%
その他 2%

●人は安静時、体重1kgあたり1時間に約1Kcalの熱を産出し、

 これを基礎代謝と呼ぶ。(1Kcal/kg/h)

●熱は食事などを摂ることで、栄養分(糖・蛋白質・脂肪)が

 代謝されてエネルギーが発生することによる。

●エネルギーは機械的・電気的・化学的な用途に約30%程が使われるが、

 残りは熱として放散される。



日常活動のエネルギー需要量

  1. 睡眠 65Kcal/時間
  2. 椅座安静 100Kcal/時間
  3. ゆっくり歩行 200Kcal/時間
  4. 水泳 500Kcal/時間
  5. 階段登行 1,100Kcal/時間

70kgの平均体重男性で、約2,000Kcal/日が必要

  • 炭水化物 4Kcal/1g
  • 脂肪 9Kcal/1g
  • タンパク質 4Kcal/1g

人は熱を出すために物を食べている

①多くの部分はそのまま熱となる《約70%》

②自由エネルギーとなって仕事をする《約30%》

  1. 蛋白質合成⇒代謝回転の際に熱として放出
  2. 筋肉の運動⇒筋肉自体や組織の粘性に打ち勝ち、四肢を動かす際の摩擦熱となる
  3. 心臓の拍動⇒血液中の層と層の間、血液と血管の壁の間の摩擦熱となる

体温を上げると健康になる

“人間の体には、増えすぎた活性酸素を解毒するために、

スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やカタラーゼ(catalase)

といった活性酸素を解毒する酵素が備わっています。

こうした「抗酸化酵素」がきちんと働くことができれば、

少々活性酸素が増えてもきれいに解毒してくれるので、

病気になることはありません。

低体温は、その大切な抗酸化酵素の働きを悪くしてしまうのです。

つまり低体温の人は、体内の活性酸素が増えやすいうえ、

活性酸素を解毒する酵素の働きが弱い状態にあるということです。

血流障害と酵素活性の低下は、健康を考えるうえで最悪の組み合わせです。

なぜならその状態では、体の機能すべてが低下してしまうからです。

体の機能が低下するということは、たんに病気になりやすいということにとどまらず、

免疫システムに誤作動が生じ、新陳代謝も低下するということです。

「酸化=老化」と考えられるのもこのためです。

低体温で体にいいことは一つもない。

これは、人間という生き物にとって、いわば自然の摂理なのです。”

体温を上げると健康になる 齋藤真嗣 サンマーク文庫